2008/10/7 がんのリスク・マネジメント:(13)塩分と胃がん:地域・時代間の相関 毎日jpより転載
がんのリスク・マネジメント:(13)塩分と胃がん:地域・時代間の相関
2008年10月7日 毎日らいふ
塩分と高血圧の関係はよく知られています。南太平洋やアマゾンには塩をほとんど使用しない食事をしている人々がいて、高血圧とは無縁であったという調査から、「塩分と高血圧」という仮説が生まれました。その後さまざまな研究が行われ、現在では高血圧予防のための減塩の重要性が確立しています。日本国内でも、東北地方に脳卒中が多いのは、漬け物や塩蔵魚介類などの塩辛い食事をする習慣があり、高血圧が多いことに起因していると考えられています。
一方、塩分と胃がんの関係についてはあまり知られていないようです。国際的には、日本は韓国と並んで胃がんの発生率が最も高い国です。同時に、日本や韓国の食事には塩分が多いという共通点があります。同じアジアの国でも、タイやインドなど、もっぱら香辛料を多く使うタイプの辛い食事をする習慣の国では、胃がん発生率は高くはありません。
実際に、世界24か国で、地域による差から病気と環境的要因の関連を調べる研究が行われ、胃がん死亡率の国による違いが、1日分の尿に排泄されるナトリウムで見た各地の塩分摂取量と同じ動きをしていることが示されました(図1)。
日本国内を見ても、胃がんは、秋田・山形・新潟などの東北日本海側地域に高い一方、西日本、特に、九州・沖縄では低く、約3倍程度の地域格差が認められています。漬け物に象徴される東北の食事、チャンプルで代表される沖縄の食事をイメージすると、塩分の使用状況が違うのは一目瞭然でしょう。そして実際に、我々が国内5地域で行った調査で、塩分の摂取量が多い地域ほど胃がんの死亡率が高いことを明らかにしています(図2)。
私は、学生時代からのライフワークとして、ブラジル日系人の健康の動向を探り、日本人や他の地域の日系人との差異から原因を考察する研究を継続、発展させています。当初から、関心は食生活を中心とするライフスタイルと病気の関連でした。実際に南米の日系移民を調査で尋ねると、そこで日本各地の固有の食文化と次々に出合うことになり、想像したこともなかったその違いが、遠い異国の地で鮮やかに脳裏に焼きついたのがきっかけでした。
そして、ハワイの日系人では比較的速やかに胃がんが減少したのに対し、ブラジルの日系人ではゆるやかに減少したことを確認しました。ライフスタイルの違いを探ると、ハワイ移民の間では比較的すぐに現地の食生活に様変わりしていましたが、ブラジル移民の間では、みそ汁など日本特有の塩分濃度の高い食品が用いられる食文化が長く残っていたのです。
ところで、世界的に胃がんの発生率は減少しています。欧米では、胃がんは50年前には最も多いがんの1つでしたが、今や珍しいがんです。日本でも、いまだに最も多いがんとはいえ、この連載の第3回で示したように、減り続けています。特に効果的な対策が施されたわけではなく、年月の経過とともに、ただ減っているのです。その理由は、胃がんの発生にかかわる何らかの大きな要因が、世界中で減ってきているからと考えるのが自然でしょう。各家庭に冷蔵庫が普及し、輸送システムが整備されることによって、保存のために食品を塩蔵にする必要が減ってきたという事情ともよく重なっています。
以上のような食生活の違いや変化に着目すると、塩の摂取と胃がんとの関連は偶然ではなさそうです。そうはいっても地域の差から見えてくる結果には、どうしても限界があります。食塩や高塩分の食品が胃がんの発生にどのように影響しているのかのさらなる検討には、個人レベルで塩分や高塩分食品の摂取状況を把握して、胃がん発生リスクとの関係を直接検証するタイプの疫学研究からのエビデンスが必要となります。
◇津金 昌一郎(つがね・しょういちろう)
国立がんセンターがん予防・検診研究センターの予防研究部長。1981年慶應義塾大学医学部卒業、85年同大学大学院修了(医学博士)、03年から現職。主な研究分野はがんの疫学研究で、人集団を対象に、様々な要因と病気の関係を検証しながら予防法を探っている。「多目的コホート研究」という大規模長期追跡調査や、国内の研究を要約・評価して確かな予防法を提示する「生活習慣改善によるがん予防法の開発に関する研究」などの研究班を率いる。「がんになる人ならない人」(講談社ブルーバックス)などの著書がある。
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腰痛の発生頻度や原因について教えてください。
上半身の重さは体重の約70%といわれています。その重さを支えているのが腰椎です。腰椎には椎体という骨の部分と椎間板という骨と骨の間に入っている部分があります。椎体は機械的な負荷により変形が進行し、また骨粗鬆症の進行とともに脆くなっていきます。椎間板も年齢とともに変性していきます。驚くことにこの変性は10歳の子供たちのすでに9%に起こっていると報告されています。治療を要する腰痛の発生頻度の調査では20歳代以上の年齢層ではほぼ同じくらい(40〜65%)で発生していることが報告されています。このような背景から近年、腰痛はもっとも有訴率が高い疾患になっています。大半の腰痛は数日間で治りますが、臀部痛や下肢痛を伴う腰痛は専門的な治療が必要になる場合も多いので注意しましょう。





