2008/11/6 がんのリスク・マネジメント:(14)塩分と胃がん:コホート研究のエビデンス 毎日jpより転載
がんのリスク・マネジメント:(14)塩分と胃がん:コホート研究のエビデンス
2008年10月21日 毎日らいふ
世界の胃がんの地域差や時代的変化に注目すると、塩分摂取との深いかかわりが推察されます。しかし、塩分自体には発がん性がなく、単独で胃がんを発生させることはできないとされています。ただし間接的には、高い塩分濃度により胃粘膜を保護する粘液層が破壊され、胃液による粘膜細胞の傷害を助長したり、炎症が起こりやすくしたりすることにより、発がん物質の作用を増強するメカニズムが考えられています。
そのような環境では、ヘリコバクターピロリ菌の持続感染が起こりやすいということを示す動物実験や疫学研究結果も報告されています。さらに、塩蔵食品の保存過程では、ニトロソ化合物などの発がん物質が多く産生され、それが胃がんのリスクを上げているとも考えられます。
これまでの症例対照研究やコホート研究などの疫学研究結果(エビデンス)をまとめた世界的な評価では、塩や高塩分食品が胃がんリスクを上げるのはほぼ確実とされています。すなわち、塩分摂取量の多い人たちが、胃がんになる確率が高いことを多くの研究が示しています。ただし、食塩そのものの摂取量は、食品についてのアンケート調査からの正確な推定が難しく、また大規模な研究を数多く実施している欧米では胃がんの発生率が低いために、その関連を調べた結果はほとんどありません。日本人のエビデンスに基づいて因果関係の評価を実施している厚生労働省の「生活習慣改善によるがん予防法の開発と評価」研究班では、塩分・塩蔵食品の摂取が胃がんリスクを上げるのは“ほぼ確実”と判定しました。判定材料となった20の研究結果の1つに、コホート研究があります。その内容を少し詳しく見てみましょう。
まず、調査開始時に行った食事調査の結果から、食塩の摂取量を算出し、男女約2万人ずつを摂取量で5つにグループ分けし、その後約10年の間に確認された胃がんのリスクを比較しました。すると、男性では、食塩摂取量が多いグループで明らかに胃がんリスクが高く、最少グループの約2倍でした。女性では、明らかな差は見られませんでした。その理由は、1つには女性では胃がんが少なかったこと(症例数が少ないと、統計学的な分析は難しいのです)、もう1つにはアンケートの結果から食塩の摂取量を、特に女性においては、うまく把握できなかったこと(一部の方で、28日間の食事内容をすべて列挙していただく食事記録と比べた場合の妥当性がいま一つでした)があげられます。
一方、高塩分食品については、塩分濃度が10%程度と非常に高い塩蔵魚卵と塩辛、練りうになどの高塩分食品の摂取頻度を尋ねて、それによって4つにグループ分けして比べると、男女とも、よくとるグループでリスクが2〜3倍高いという結果でした。
そのような食品をよく食べる人は、食塩の総摂取量も高いのかもしれません。それとも、食塩とは独立に、塩分濃度の高い食品特有の作用があるのかもしれません。どちらにしても、日本の食文化とかかわりの深い塩分濃度の高い塩蔵魚介類を控えることは、胃がんのリスクを減らすために、重要であることが確かめられました。
そういうわけで、胃がん予防の観点からは、特に高塩分の食品を減らすことが重要ですが、総合的な食塩の過剰摂取も高血圧と密接に関連し、その結果、脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めます。日本の伝統的な食事の良いところを残しつつ、薄味に慣れるよう努力しましょう。毎日必ず塩蔵品を食べる人は、次第に回数を減らす工夫を重ね、週1〜2回程度に抑える必要があるでしょう。
◇津金 昌一郎(つがね・しょういちろう)
国立がんセンターがん予防・検診研究センターの予防研究部長。1981年慶應義塾大学医学部卒業、85年同大学大学院修了(医学博士)、03年から現職。主な研究分野はがんの疫学研究で、人集団を対象に、様々な要因と病気の関係を検証しながら予防法を探っている。「多目的コホート研究」という大規模長期追跡調査や、国内の研究を要約・評価して確かな予防法を提示する「生活習慣改善によるがん予防法の開発に関する研究」などの研究班を率いる。「がんになる人ならない人」(講談社ブルーバックス)などの著書がある。
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腰痛の発生頻度や原因について教えてください。
上半身の重さは体重の約70%といわれています。その重さを支えているのが腰椎です。腰椎には椎体という骨の部分と椎間板という骨と骨の間に入っている部分があります。椎体は機械的な負荷により変形が進行し、また骨粗鬆症の進行とともに脆くなっていきます。椎間板も年齢とともに変性していきます。驚くことにこの変性は10歳の子供たちのすでに9%に起こっていると報告されています。治療を要する腰痛の発生頻度の調査では20歳代以上の年齢層ではほぼ同じくらい(40〜65%)で発生していることが報告されています。このような背景から近年、腰痛はもっとも有訴率が高い疾患になっています。大半の腰痛は数日間で治りますが、臀部痛や下肢痛を伴う腰痛は専門的な治療が必要になる場合も多いので注意しましょう。





