【11月10日ルイジアナ州、ニューオリンズ】
血小板反応性を測定し、必要に応じてクロピドグレルを個別に調整する戦略は経皮的冠動脈形成術(PCI)施行患者において早期ステント血栓症の発生率を減少させる可能性があることが、新規研究により示されている。Franck Paganelli博士(マルセイユ大学、フランス)は、米国心臓協会2008年科学セッション(American Heart Association 2008 Scientific Sessions)(ニューオリンズ)でこの結果を報告し、反応良好患者群、低反応患者群、「抵抗性患者群」(この群では必要に応じてクロピドグレルの用量を個別に調整できる)という3群のうちの1群に患者を層別化する戦略が裏付けられたことを示唆している。 一方、抗血小板療法への患者の反応度の測定についてどの検査が最良であるか、また収集したあらゆる情報に基づく行動の最善の戦略については、未だ循環器医の間で見解の一致はみられていないと指摘する者もいる。 Paganelli博士らは、クロピドグレルの負荷用量600mg(アスピリン250mgと併用)投与後に非緊急性PCIを受けた患者1122例に対して同薬剤への反応性をスクリーニングした。反応性とは、in vivoでのP2Y12血小板表面化学受容体(platelet-surface chemoreceptor)に対するクロピドグレルの結合度を測定する検査に基づき、血管拡張剤刺激性リンタンパク質(VASP)指数が50%以上と定義した。全患者のうち、反応性が低下していると見なされた患者429例を最終的に、クロピドグレルの維持用量(75 mg)を投与する対照群、またはVASPがPCI前の50%以下に低下するまで24時間毎に600mgの負荷用量を3回まで追加投与するVASPガイドによる負荷用量投与群にランダムに割り付けた。 この研究の主要評価項目である30日後の確定した術後ステント血栓症(stent thrombosis postprocedure)は、VASPガイド群の患者では対照群と比較して有意に減少し、ほとんどすべてのステント血栓症は最初の7日間に発生していた。VASPガイド群では、心血管死が減少し、再血行再建術が減少する統計的非有意の傾向が見られるとともに、心筋梗塞(MI)の有意なリスク減少が認められた。結果として、すべての主要心血管イベント(MACE)はVASPガイド群において有意に低下した。VASPガイド群における出血発生率に差は認められなかった。
クロピドグレル負荷用量の個別調整に関する研究の結果 評価項目 | 対照群, 例 (%) | VASPガイド群, 例 (%) | P値 | 確定したステント血栓症 | 10 (4.7) | 1 (0.5) | 0.01 | 心血管死 | 4 (1.8) | 0 | 0.06 | MI | 10 (4.8) | 1 (0.5) | 0.01 | 緊急の標的血管血行再建術(TVR) | 5 (2.3) | 0 | 0.06 | 全MACE | 19 (8.9) | 1 (0.5) | <0.001 |
「この研究で得られた第一のメッセージは、血小板反応性のモニタリングによってクロピドグレルの負荷用量を調整すれば、クロピドグレル反応性の低い患者において、出血を増加させることなく30日後のステント血栓症発生率が低下するということである」とPaganelli博士は結論している。 第二の要点は、患者は、反応良好患者、低反応患者、ならびにPCI前にクロピドグレル負荷用量を微調整する必要がありうる抵抗性患者という3群のうちの1群に分類されると考えられるということである、とPaganelli博士は話を続けている。 そして、最後に、米国大統領選のバラク・オバマ氏の選挙運動のスローガンを引用し、「第三のメッセージは、『私たちにはできる(Yes we can!) 』である。そうだ、我々は今やMACEを避けるためにPCI施行患者における抗血小板療法の治療濃度域[を明らかにすること]ができる。それは新しいパラダイムである」とPaganelli博士は述べている。 問題点は残る
Elliot Antman博士(ブリガム&ウィメンズ病院、マサチューセッツ州、ボストン)はこの結果について論じて、この分野における先駆的研究について同著者らを称えつつも、血小板反応性検査の設備(logistics)、精度、再現性、ならびに取るべき適切な措置を明らかにするために今後の研究が必要であることを強調している。 第一に、VASP指数はクロピドグレル反応性を測定するには「かなり特別な検査」であるとAntman博士は述べている。「50%が理想的なカットオフ値であるかどうかについて議論する余地があり、これらの抗血小板検査の使用法について未だ学んでいる段階であると言っておこう。私は個人的には、抗血小板反応性検査について、標的という点ではプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)に対するほどの自信はないと考えている」とAntman博士は記者会見でコメントしている。 Paganelli博士らが説明した方法では、「負荷用量の反復投与」が必要となるために,薬剤投与が効果を現すのに時間がかかり、次いで検査結果が戻って来るまでにさらに時間がかかることになる。 最新の臨床試験の発表において、Paganelli博士は、共同研究者らとともに、長期間の遅れを避けるための診療をすでに調整していることを明らかにしている。VASP検査にかかわらず、患者らはPCIに進み、その後家庭に帰され、VASP結果が再び50%を超えている場合には家庭で維持用量を増量する、とPaganelli博士は述べている。 しかし、Antman博士は、特にどの検査を使用すべきかに関する広範な見解の一致が得られていないことから、反応性検査に基づいて薬剤用量を変更する戦略が妥当であるとするには、さらにエビデンスが必要であると述べている。「これらの臨床検査の完全性と使用法に関する情報がさらに必要である」とAntman博士は述べている。臨床検査は、転帰とよく相関し、完全に治療効果を表すとともに、同薬剤クラスの他の治療法でも再現可能でなければならないとAntman博士は主張している。GRAVITAS試験は、この点で、更なる情報を提供するであろう、とAntman博士は述べている。 しかし、Antman博士は、クロピドグレル反応性の変動に対処する方法は他にもあり、その第一は「実験的に」高用量を投与する戦略であることも示唆している。この戦略は現在実施中のOASIS 7試験の主題であるとAntman博士は述べている。 最後に、Antman博士は、FDA承認の準備がされていると考えられているprasugrel、ならびにAZD6140と静注剤cangrelorなどの新規薬剤など、未だ準備段階にある新しい治療薬はさらに一貫した抗血小板作用を提供する可能性があると指摘している。 |