2009/1/2 がんを追尾して狙い撃ちする最新放射線治療器「サイバーナイフ」 毎日jpより転載
がんを追尾して狙い撃ちする最新放射線治療器「サイバーナイフ」
2009年1月1日 毎日らいふ
今、臓器や機能を温存してがんをピンポイントで攻撃する放射線治療器として注目されているのが「サイバーナイフ」です。麻酔も必要なく、外来での治療も可能です。これまで、日本では脳腫瘍を中心に首から上のがん治療に利用が限られていましたが、ようやく昨年、肝臓や肺のがんにも承認されました。サイバーナイフの治療では世界一の症例数を持つ新緑脳神経外科・横浜サイバーナイフセンター院長の佐藤健吾さんにその利点を聞きました。
◇ピンポイントでがんの病巣に照射
今、がん治療では外科手術に代わる、より体への負担が少ない治療法が求められています。その1つとして、注目されているのが「サイバーナイフ」。ピンポイントでがんを攻撃する放射線治療器です(図1)。
放射線治療は、体にメスを入れたり、臓器を失うことなく治療ができるのが大きな利点です。しかし、放射線は正常細胞も傷害するので、これをどう防ぐかが長い間追究されてきました。例えば、体内のがんに外から放射線を照射すると、その通り道にある細胞にも放射線が影響します。そこで、一般的な放射線治療では、体の周囲から病巣に向かって少量の放射線を20〜30回に分けて照射し、正常細胞への影響をできるだけ少なくしているのです。そのため、ピンポイントで目的の部位に放射線を照射する方法が研究されてきました。その結果生まれたのが、サイバーナイフなど新世代の放射線治療器です。「1990年代には、ガンマナイフやサイバーナイフ、小線源療法など、ピンポイントで放射線を照射することができるようになったのです」と佐藤さんは語っています。
小線源療法は、放射線を出す小さな線源を体内に埋め込み、体の内側から限局された範囲に放射線を照射する方法で、舌がんや前立腺がんなどの治療に用いられています。これに対して、特殊な機器を使ってコンピュータで治療計画を立て、狙った部位に放射線をピンポイントで照射するのが、ガンマナイフとサイバーナイフです。いずれも「ナイフ」と呼ばれるのは、ナイフで切り取るぐらいシャープに標的部位を攻撃できるからです。
◇1センチ以下のズレは自動的に追尾
サイバーナイフは、1994年に米国の脳外科医によって開発された治療器です。簡単にいえば、自動車工場で溶接などに使われていた産業用ロボットのアームにエックス線のビームを発射する小型のリニアックを取り付けた装置です。
産業用ロボットは、小さなネジさえ取り付けるほど精密な動きをします。サイバーナイフのアームも6つの関節を持ち、しなやかに腕を動かしながら、100か所の位置からそれぞれ12方向にエックス線を照射することができます。つまり、計1,200本のエックス線をがんの形に合わせた方向、強さで照射することができるのです。もっとも「実際には1,200本も照射することはなく、30〜200本程度で十分がんをカバーできる」そうです。
アームは、0.2ミリ以下の精密さで同じ位置を照射できるほどのすぐれものです。さらに、わずかな位置のズレも自動的に追尾してエックス線を照射できます。巡航ミサイルと同じ原理で位置情報をキャッチし、1センチ以下のズレであればアームが自動的に標的部位を追尾して照射位置を補正するのだそうです。「それ以上ズレが大きくなると機械が停止するので、人間が直してあらためて治療を開始します」と佐藤さん。そのおかげで、ターゲットをはずすことなく、またじっとしているのが難しい子どもでも麻酔をせずに治療ができるのです。
実際には、例えば脳腫瘍の場合、治療計画のベースになるのはCTです。これにMRIの画像も加えて照射計画を立て、コンピュータにインプットします(図2)。頭部を固定するために、治療前日にはプラスチックのメッシュでできた板を顔に当てて伸ばし、専用のマスクを作ります。さらに枕を作り、当日はこれらを装着して放射線治療を受けます。治療時間は、平均30〜40分前後です。
「3センチ以下の脳腫瘍であれば、1回の治療で終わります」と佐藤さん。ピンポイントで照射できるので、一度に必要量の放射線を照射することが可能です。従来の放射線治療のように、何十日も治療に通わなくてすむのもサイバーナイフの利点です。
◇多くの脳腫瘍はコントロール可能
苦痛が少ないことも大きな長所です。患者さんはベッドに寝ているだけで、麻酔も必要なければ痛みも熱さもありません。この日も、治療が終わると患者さんは何事もなかったかのように立ち上がり、歩いていました。
佐藤さんがサイバーナイフで治療した患者さんの年齢は、2〜95歳。体の負担が少ないので、小さな子どもから高齢者まで治療が可能なのです。
同じピンポイント攻撃でも、ガンマナイフの場合は、半球形の機器に201個の穴が開いていて、ここから1点に向かってガンマ線が照射されます。患者さんは頭部をこの装置に固定されて、治療を受けます。
エックス線もガンマ線も「細胞のDNAを切断してがん細胞の増殖を阻止する」という点では同じです。「1センチ以下の転移性脳腫瘍なら、どちらで治療しても同じだと思います」と佐藤さんは語っています。ただ、ガンマナイフの場合は追尾システムがないので、正確に照射するために、局所麻酔をして頭に金属製のフレームをネジで止めて、しっかりと固定しなければなりません。
その点、サイバーナイフはメッシュの専用マスクを装着するだけですむのも利点。何回かに分けて治療(分割照射)をしても照射位置がずれないので、視神経に近い部位や脊髄に近い部位など微妙な部分にできた腫瘍には、分割照射をして神経を守ることもできます。3センチを超える大きな脳腫瘍でも分割照射で治療ができるといいます。「5センチぐらいまでならば可能です」と佐藤さん。
2005年の導入以来、同センターでサイバーナイフ治療を受けた患者さんは2,100人以上になります。皮膚の日焼けや口内炎などの副作用はありますが、一般の放射線治療に比べればはるかに少ないといいます。照射部位の脱毛も起こりますが、数か月で元に戻るそうです(図3)。
こうした治療のおかげで、転移性脳腫瘍の治療は著しく進歩しました。「私が医師になった80年頃は、脳に転移したら余命半年と言われましたが、今では脳転移で命を落とすことはまずありません」と佐藤さんは語っています。転移性でも良性でも、脳腫瘍は正常の脳神経を圧迫してマヒなどの障害を起こし、ひどくなれば死に至ります。しかし、「ほとんどの脳腫瘍はサイバーナイフでコントロールできます。例えば脳下垂体近くの良性腫瘍は95%がコントロールできている」そうです。車椅子で治療を受けに来た患者さんのマヒが治って歩いて定期検診に来るなど、治療を受けた患者さんの多くで症状が改善しているのです。また、耳下腺のがんで、「メガネが乗る分だけ耳を残して切除しましょう」と言われた患者さんが、サイバーナイフのおかげで耳を失わずにすんだそうです。
日本ではサイバーナイフは転移性や原発性の脳腫瘍、上顎や下顎など口腔のがん、咽頭がん、耳のがん、頸部リンパ節転移など首から上のがん治療に利用されてきました。この部位のがんは、手術で摘出すると変形や機能の損傷が大きいので、放射線治療が積極的に行われています。
ところが、世界では今やサイバーナイフは、体のがんに使われる率のほうが高くなっています。「韓国でも、今は体幹部のがん治療が7割だそうです」と佐藤さん。米国でも2001年に全身での治療が認められ、今ではサイバーナイフ治療の半分以上が体のがん。機器もそれに伴って進歩しているといいます。これに対して、日本では、昨年ようやく肺や肝臓など体のがんへの薬事承認がされたところです。日本の医療は世界標準からかなり立ち遅れているのです。
今のところ、肺がん、肝臓がんは転移がない直径3センチ、3個以下のがんが対象です。治療は、基本的には頭頸部がんと同じで、ベッドに1時間ほど寝ているだけで、数日で終わる予定です。ただし、問題は目印になる金属です。頭頸部の場合は、頭蓋骨など骨を基点に照射位置が計算されますが、体のがんの場合は基点として米粒ほどの純金のマーカーをがんの病巣周囲に打ち込む必要があります。しかし、このマーカーが保険で承認されていないため、「現状では混合診療が認められていないので、サイバーナイフで体幹部のがん治療を受けようとすると自費扱いになってしまう」という何とも中途半端な状態です。
そこで、横浜サイバーナイフセンターでは、まず保険で認められている脊髄の脳動静脈奇形、自費扱いで胸髄と腰髄の骨転移と良性腫瘍の治療から体幹部の治療を開始する予定です。まだ、長期的な治療成績や副作用の問題など検証していく必要はありますが、世界で行われている治療が日本で受けられないという状態は改善してほしいものです。
(取材・文 祢津加奈子)
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腰痛の発生頻度や原因について教えてください。
上半身の重さは体重の約70%といわれています。その重さを支えているのが腰椎です。腰椎には椎体という骨の部分と椎間板という骨と骨の間に入っている部分があります。椎体は機械的な負荷により変形が進行し、また骨粗鬆症の進行とともに脆くなっていきます。椎間板も年齢とともに変性していきます。驚くことにこの変性は10歳の子供たちのすでに9%に起こっていると報告されています。治療を要する腰痛の発生頻度の調査では20歳代以上の年齢層ではほぼ同じくらい(40〜65%)で発生していることが報告されています。このような背景から近年、腰痛はもっとも有訴率が高い疾患になっています。大半の腰痛は数日間で治りますが、臀部痛や下肢痛を伴う腰痛は専門的な治療が必要になる場合も多いので注意しましょう。





