2009/1/6 がんのリスク・マネジメント:(19)肥満とがん:国際的視点から 毎日jpより転載
がんのリスク・マネジメント:(19)肥満とがん:国際的視点から
2009年1月6日 毎日らいふ
肥満とがんとの関係ですが、国際的な評価(WCRF/AICR、2007年)(図)では、肥満に関連するがんとして、食道がん(腺がん)、大腸がん、腎がん、膵臓がん、子宮体がん、乳がん(閉経後)が挙げられています。さらに、胆嚢がんもおそらく確実と判定されています。
肥満とがんとの関連では、さまざまなメカニズムによるリスク上昇が考えられています。脂肪組織から放出される女性ホルモンのエストロゲン(子宮体がん、閉経後乳がん)、インスリン抵抗性により生じる高インスリン血症や遊離型インスリン様増殖因子の持続的増加(結腸がんなど)、胃酸の胃−食道逆流(食道腺がん)、あるいは、局所の慢性炎症(肝がんなど)などがあります。
さらに、BMIだけではなく、腹囲やウエスト・ヒップ比など内臓脂肪量の指標を用いることにより、病気のリスクをより正確に予測できるとの報告がいくつか出ています。このような研究はまだ多くはないのですが、国際的な評価(WCRF/AICR、2007年)では、内臓脂肪という肥満をより掘り下げた観点から、大腸がんについては確実に、膵臓がん、乳がん(閉経後)、子宮体がんについてはおそらく確実にリスクを上げると判定されています(図)。
さて、肥満でリスクが高くなるこれらのがんの多くは、日本にはもともと少ないけれども戦後増加傾向にあった、いわゆる欧米型のがんとして知られています。どちらにしても、がんの原因なのだから肥満は健康に悪いと言えそうですが、そう単純には割り切れない問題もあります。
肥満という体形は、体重と身長のバランスで決まります。客観的にその目安を示す肥満指数(BMI)を算出するための式があって、体重(kg)を身長(m)で2回割ります。ただし、やせているか太っているかという体形は、人と比べるからそうなるのであって、どの集団の中にいるかによって変わります。日本人は、欧米人に比べ、やせている人が多い集団と言えるでしょう。その中で太っていることは、国際的には必ずしも太りすぎていることを意味するとは限りません。
そもそも肥満の割合が多い国では、そのコントロールが重要な課題となります。米国成人のBMIが25、30を超える割合は(2003〜04年)、それぞれ男性71%、31%、女性62%、33%というのが現状です。肥満が3割を超え、かつ、肥満に関連するがんの頻度が高くなっています。その結果、米国におけるがん死亡の15〜20%が過体重・肥満に起因するという推計もあります 。英国や他の欧米諸国でも同様な現状であり、このような社会においては、肥満対策は、がん対策における効果的かつ優先度の高い施策となります。肥満解消は、禁煙と同じように、努力次第で達成することができるのが前提なので、集中的に指導されることになり、世間の風潮も高まります。
それに対し、日本のデータでは、15歳以上のBMIが25、30を超える割合は、それぞれ、男性27%、3%、女性20%、3%であり、米国とはかなり様相が異なります。また、ここ30年間のBMIが25を超える国民の割合は、男性では増加傾向にありますが、女性では横ばいから近年は減少傾向にあります。そして、肥満に関連するがんの頻度がもともと低いので、がん予防という観点からは肥満のコントロールにそれほど大きな効果は期待できません。
WHOでは、2型糖尿病リスクと循環器系疾患(心筋梗塞や脳卒中など)リスクを反映させ、その高リスク群を肥満と定義しました。その国際基準では、BMI 25以上が過体重、30以上が肥満とされます。日本では欧米に比べ肥満の基準が低く設定されています。すなわち、肥満指数25以上が、一般に肥満と呼ばれます。肥満がベースにあって、肥満を1つの原因とする糖尿病などの病気がある場合には、肥満そのものが「肥満症」として治療の対象になります。また、この流れがメタボリック・シンドロームに至り、日本独自の腹囲値を中心とした診断基準となっていることはご存じのとおりです。腹囲を用いているのは、内臓脂肪の量を反映した簡便な指標であり、メタボリック・シンドロームの発生には、皮下脂肪や筋肉・骨などを除いた肥満が重要との考えに基づいたものです。
肥満の基準が国によってまちまちで、特にアジア諸国で低い基準が採用されている理由として、同じBMIでもアジア人では体脂肪率が高い人が多く、また2型糖尿病のリスクが高いことが挙げられます。やせればやせるほどリスクが下がるような疾患について考えれば、確かに太るのは悪いことのように見えます。その一方で、栄養不足でやせている人でリスクが高い病気もあるのです。
今のところ、糖尿病や高血圧などの病気がなければ、中年期以降、男性はBMI 27を超さない21を下まわらない、女性は25を超さない19を下まわらない程度を保つように心がけるのが良いのではないかと考えています。特に男性については、糖尿病や循環器疾患を集中的にターゲットにした従来の提案とは、少々異なるゾーンに落ち着きました。どうしてそうなったのか、次回はその具体的なエビデンスを示します。
◇津金 昌一郎(つがね・しょういちろう)
国立がんセンターがん予防・検診研究センターの予防研究部長。1981年慶應義塾大学医学部卒業、85年同大学大学院修了(医学博士)、03年から現職。主な研究分野はがんの疫学研究で、人集団を対象に、様々な要因と病気の関係を検証しながら予防法を探っている。「多目的コホート研究」という大規模長期追跡調査や、国内の研究を要約・評価して確かな予防法を提示する「生活習慣改善によるがん予防法の開発に関する研究」などの研究班を率いる。「がんになる人ならない人」(講談社ブルーバックス)などの著書がある。
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腰痛の発生頻度や原因について教えてください。
上半身の重さは体重の約70%といわれています。その重さを支えているのが腰椎です。腰椎には椎体という骨の部分と椎間板という骨と骨の間に入っている部分があります。椎体は機械的な負荷により変形が進行し、また骨粗鬆症の進行とともに脆くなっていきます。椎間板も年齢とともに変性していきます。驚くことにこの変性は10歳の子供たちのすでに9%に起こっていると報告されています。治療を要する腰痛の発生頻度の調査では20歳代以上の年齢層ではほぼ同じくらい(40〜65%)で発生していることが報告されています。このような背景から近年、腰痛はもっとも有訴率が高い疾患になっています。大半の腰痛は数日間で治りますが、臀部痛や下肢痛を伴う腰痛は専門的な治療が必要になる場合も多いので注意しましょう。





