2010/3/20 [大腸がん新事情](上)(中)(下) YOMIURI ONLINEより転載
[大腸がん新事情](上)広まる腹腔鏡手術
(2010年3月18日 読売新聞)
北里大病院(相模原市)渡辺昌彦外科学主任教授(56)
腹腔鏡による大腸がんの手術に当たる渡辺教授(右から2人目)。2台のモニター(右奥はうち1台)に患部が映し出される(北里大病院で)
「大腸がん治療」をテーマにした「医療ルネサンス相模原フォーラム」(主催=読売新聞社、後援=神奈川県、相模原市、神奈川県医師会、相模原市医師会)が4月8日に開かれるのを前に、県内の医療関係者が大腸がんの手術や検査、食生活のあり方などを語った。
「開腹手術と変わらない効果が確認されれば、(大腸がんの手術を)できる限り腹腔 鏡でやろうという波が来る」。腹腔 鏡手術の効果は、海外では確認済みで、日本でさらに精密な臨床試験が行われているという。
1992年、慶応大病院で、日本初の腹腔鏡による大腸がん手術を成功させた第一人者。手がけた同手術は2000例近くに上る。
「傷が小さいため、術後の痛みや患者の負担が少なく、翌日から軽食も取れる。腸を動かしながら手術することで、癒着や将来の腸閉塞 の可能性も低くなる」とメリットを挙げる。
腹腔鏡による大腸がんの手術を行っているのは「全国の約3割の施設」にとどまるが、北里大病院(北里東も含む)では、昨年の約300例のうち、約200例を占める。
ただし、すべての大腸がんに適するわけではない。「部位で言えば、横行結腸の進行がんは現時点では技術的に難しく、直腸も判断を迫られる。大きすぎるがんや他の臓器に食い込んだものはできない」
医師には特殊な技術と経験が必要とされる。「指導者や教育システムを備えた施設でなければできない。技術に個人差もあり、(手術の)数をこなせばいいという訳ではない」と指摘する。
02年、慈恵医大青戸病院で、経験や技術が浅い医師らが腹腔鏡による前立腺がん摘出手術を行って男性患者が死亡、業務上過失致死罪に問われた事件のように、医療事故も後を絶たない。
では、医師や病院をどうやって選べばよいのか――。
自分の病気が腹腔鏡による手術に適すると診断された場合には、「内視鏡外科学会が行っている世界でも珍しい医師への技術認定制度が参考になる」。匿名で手術の生の映像を審査するもので、合格率は30%程度。「万能ではないが、病院の手術数も一つの目安」という。
手術になった場合は、医師と患者の信頼関係が極めて重要だという。「医師は患者の許しを得てメスを立てる。言わば、体に傷害を与える。患者側には、何があってもその医師と一緒に病気を治していこうという強い意志が必要。医師は、それがあって初めて意気に感じ、手術ができるんです」(高柳繁範)
腹腔鏡 先端に高性能カメラ(直径5〜10ミリ)が付いた内視鏡で、腹部に直接挿入する。大腸がんの手術では、腹部を二酸化炭素で膨らませ、挿入孔(長さ5〜12ミリ程度)を数か所開ける。挿入した腹腔鏡の映像をモニターで見ながら、別の挿入孔から入れた電気メスなどで、がんやリンパ節を除去する。
[大腸がん新事情](中)治療10分 日帰りも可能
(2010年3月18日 読売新聞)
昭和大横浜市北部病院(横浜市都筑区)工藤進英副院長(62)
「早期の大腸がんであれば、ほとんどが内視鏡治療で治すことができる」
手がけた大腸内視鏡検査は15万例。肛門 から入れた内視鏡(長さ約1・3メートル)を大腸の端の盲腸まで到達させるのに3分。異常がなければ検査を5分で終わらせる。1時間以上かかる医師もいるだけに、「ゴッドハンド」とも呼ばれる。
代表的な内視鏡治療は、ポリープ状のがんにワイヤを引っかけて電気で焼き切る「ポリペクトミー」と、平らながんに生理食塩水をかけて隆起させて切り取る「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」。ポリペクトミーやEMRでも治療が難しい場合、特殊な電気メスを使う「粘膜下層剥離 術(ESD)」を行う。
横浜市緑区の主婦伊藤房子さん(69)は2008年10月、近所の病院で大腸に直径25ミリの隆起性のがんが見つかり手術を勧められ、同大で09年3月、EMRでがんを取り除くことができた。治療時間は約10分で、1日で退院した。伊藤さんは「痛みは感じなかった。治療はあっという間で、普段の生活に戻れました」と振り返る。
大腸がんは、腸壁にどれだけ食い込んでいるかで進行度が判断される。がんが粘膜と粘膜下層の浅層までにとどまっていれば、内視鏡治療で取り除くことができ、日帰りや1日で退院が可能という。筋層近くまで食い込んでいると、腹腔鏡 手術や開腹手術が必要となる。
「内視鏡器具の発達で、がん細胞を100倍で見ることもでき、より精度の高い診断ができるようになった。治療の選択も広がっている」と話す。
ただ、注意しなければならないのが、悪性度が高い「陥凹 型大腸がん」だ。大腸がんは良性ポリープががん化したケースが多いが、陥凹型は最初からがんで、転移率も高い。それでも、早期であればEMRで取り除くことができるという。
厚生労働省・がん対策推進室によると、部位別がん死亡数(2007年)で、日本人女性の第1位は大腸がん。日本人男性でも肺がん、胃がんに次いで第3位となっている。「2015年には男女とも第1位になる」と予測する。
大腸がんは早期であればほかの臓器に転移しにくく、治りやすい。それだけに、「自分だけは大丈夫と思わず、症状の出ないうちに内視鏡検査を受けて欲しい。大腸がん治療には早期発見が大切です」と話した。(宮本俊一)
陥凹型大腸がん 工藤副院長が1985年、当時医学界で存在を認められず、「幻のがん」とも言われていた表面がくぼんだ大腸がんを複数発見。96年にフランスの学会でこのがんの存在を証明し、世界的に注目された。進行すると肝臓に転移する可能性が高い。
[大腸がん新事情](下)食生活「日本型」回帰を
(2010年3月18日 読売新聞)
東海大病院(伊勢原市)藤井穂波栄養科長(56)
「腸には100兆もの善玉・悪玉・日和見菌がいて体全体の免疫をつかさどっており、飲食物はその腸の働きに大きく影響する」と語る。
80人のスタッフを率いて、約650食の入院患者の食事を管理したり、食事指導をしたりしている。
東海大病院では、大腸がんの開腹手術を受けた患者に対し、手術後5日程度、絶食させた後、重湯やおかゆから始めて約5日かけて通常の食事が取れるようにする。手術と同時に放射線治療や化学療法を始める場合は絶食期間がさらに長引くが、「静脈からの栄養注入に頼って腸を動かさないと、小腸の突起(柔毛)がなくなって腸内がツルツルになり、感染症などの問題が起きてくる」。そのため、医師と相談しながら、できるだけ早く口から食事が取れるようにしているという。
大腸がんにかかりにくくするにはどんな食事がよいのだろうか。2002年に米国がん学会が発表した食事と運動のガイドラインは、大腸がんについて、高脂肪(特に牛・豚・羊肉)やたばこ、過度の飲酒で発病のリスクが高まると指摘。野菜、果物の摂取や、1日45分以上の力強い運動を週5日以上行うことが予防対策になるとした。
昨年11月には同じ米国で、BMI(体格指数)が25以上30未満の人より、肥満度が高い30以上の人の方が、男女ともに大腸がんになる確率が高いとの疫学調査結果も発表された。
2007年の日本人の大腸がんによる死者は、約4万1000人で、肺がん、胃がんに次いで多い。
「遺伝もかなり関係すると言われるが、欧米化が進み、高たんぱく、高脂質になった食生活の変化が影響しているのは間違いない」と指摘する。
これを踏まえ、「食生活を見直し、昔ながらの日本の食事に近づけることが予防につながる」と提案する。具体的には、穀類や芋、大豆、野菜、魚を中心に、適度な肉を取るという食事で、特に「動物性たんぱく質を抑え植物性たんぱく質を増やすことがポイント」と言う。
朝食抜きや、深夜に食べるなど、社会生活の変化で不規則になっている食事の取り方も問題視している。「規則正しく1日3回食事を取ることが大事。朝食を食べるのは、腸を動かす上でも意味があるんです」 (高柳繁範)
【BMI】 Body Mass Indexの略。体重÷身長(メートル)÷身長(同)で計算し、肥満の目安になる。18.5未満がやせ、18.5以上25未満が正常、25以上30未満が肥満度1……となり、最高は40以上の肥満度4。疫学的な調査から、「22」が最も死亡率が低い理想の体重とされる。
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腰痛の発生頻度や原因について教えてください。
上半身の重さは体重の約70%といわれています。その重さを支えているのが腰椎です。腰椎には椎体という骨の部分と椎間板という骨と骨の間に入っている部分があります。椎体は機械的な負荷により変形が進行し、また骨粗鬆症の進行とともに脆くなっていきます。椎間板も年齢とともに変性していきます。驚くことにこの変性は10歳の子供たちのすでに9%に起こっていると報告されています。治療を要する腰痛の発生頻度の調査では20歳代以上の年齢層ではほぼ同じくらい(40〜65%)で発生していることが報告されています。このような背景から近年、腰痛はもっとも有訴率が高い疾患になっています。大半の腰痛は数日間で治りますが、臀部痛や下肢痛を伴う腰痛は専門的な治療が必要になる場合も多いので注意しましょう。





