記事:共同通信社 提供:共同通信社
【2008年6月25日】 5月17日、JR仙台駅近くのホールに千葉や岐阜、大阪など各地の自殺者遺族が集まった。約30都道府県、200人以上が参加する「全国自死遺族連絡会」の初集会。「何十年と続く悲しみにどう向き合うか」「地域で孤立する仲間を救いたい」。これまで表舞台に立つことが少なかった遺族たちの「生の声」が会場に響いた。 「遺族だからこそ、気持ちを分かり合える」。福島市の女性の言葉に拍手がわく。連絡会の世話人、田中幸子(たなか・さちこ)さん(59)=仙台市青葉区=も壇上で小さくうなずいた。
▽後を追いたい
3年前の11月、幸子さんは警察官だった長男健一(けんいち)さん=当時(34)=を自殺で亡くした。異動直後の激務に体調を崩し休職中の出来事。休職が決まった後も、健一さんが自主的に仕事に出ていたと後で知った。 「ゆっくり休み、落ち着いてきていると思っていた」。息子の苦しみを理解し切れていなかった後悔。「後を追いたい」との気持ちを懸命に抑えた。 すがる思いで遺族支援の会合に参加したが、当事者でないスタッフを交えて悩みを語り合う進め方になじめなかった。 「いすに座っていつもしくしく泣いている『典型的な遺族』を演じてしまった」。会合の後、遺族だけで開かれた「お茶会」の方がしっくりきた。冗談を言っていたかと思うと、突然床に突っ伏して泣きだす人。同じ痛みを持つ人同士なら素直に振る舞えると知った。
▽行動する遺族
遺族が運営する自助グループ「藍(あい)の会」を発足させたのは2006年。他県からも参加者や電話相談が相次いだ。「当事者が思いをはき出せる場がいかに少ないか」。そんな驚きが、各地の遺族や自助グループが連携し、支え合う全国連絡会の結成につながった。 昨年6月に政府が決定した「自殺総合対策大綱」には、遺族支援も柱の一つとして明記された。だが、具体的な方策はまだ途上だ。精神的ケアや相続などの法律相談、生活支援の充実など課題は山積している。 「国はなぜ、遺族支援の仕組みづくりに当事者の声を生かさないのか」。連絡会の初集会では、こんな不満の声も上がった。行政の支援策検討の場で遺族が直接意見を述べる機会は、ほとんどないのが実情という。 「遺族だからこそできる遺族支援がある」。その思いを行政や専門家にも伝えたい。まだ声は小さい。それでも最近、各地の自治体から問い合わせが来るようになった。 「『行動する遺族』が認められつつあるのかな」。幸子さんは明るい表情でそう話した。
※ 自殺者遺族の支援
自殺者遺族の支援 国の自殺総合対策大綱は、自殺した人の遺族への対応を「後追い自殺を防ぐことも期待できる」として重視。自助グループの運営支援や、相談窓口を記したパンフレットの配布などに積極的に取り組むとしている。 |