【7月10日】
有酸素インターバルトレーニングを含めた運動療法がメタボリックシンドロームの者にベネフィットがあるらしいという小規模パイロット試験の結果が出た[1]。ノルウェーの研究チームが2種類の運動療法の処方を比較したところ、メタボリックシンドロームのリスク因子のほとんどが高強度運動で実際に改善した。たった16週間の運動プログラム終了時には、この処方に割り付けられた患者のほぼ半数が、食事内容はいっさい変化していないにもかかわらず、すっかりメタボリックシンドロームから脱していた。定常的な中強度の運動ではこれほど印象的な成果は得られなかった この知見をheartwireが最初に報告したのは、著者らが2006年アテローム性動脈硬化症国際シンポジウムのポスターセッションで発表した時であった。今回、出版された結果に基づいて著者らは、1日に30分間の中強度運動を推奨する標準的推奨(米国心臓協会[AHA]やその他の団体が支持している)が、この特定の高リスク群には不十分である可能性があることをこの知見が示唆していると述べている。 Dr Arnt Erik Tj遵knna(ノルウェー科学技術大学、ノルウェー、トロンヘイム)らが発表したこの試験結果は、『Circulation』2008年7月7日号オンライン版に掲載されている。 回数は少なく、運動は激しく
筆頭著者であるDr Ulrik Wisl遵kff(ノルウェー科学技術大学)はheartwireに対して、今回の運動処方は週に3回で総時間120分であったことを強調した。 「この試験は、メタボリックシンドロームの者の心血管系に運動強度が及ぼす実際の効果を比較する初めてのものだ」と博士は言う。「この試験に参加した者が行った運動は、それぞれ強度は異なるが1回の運動セッションで消費するエネルギーは同じであった。」 heartwireの前回の報告にあるように、メタボリックシンドロームの者32例をランダム化して、中強度の連続運動、有酸素インターバルトレーニング、特に推奨する運動なしのいずれかに割り付けた。16週間の試験期間と追跡検査を完了したものは全部で28例だった。中強度運動群の被験者は、インターバル群よりも運動時間を若干長くして、エネルギー消費量は群間で差がないようにした。 ランダム化プロトコルに従った週3回の運動を16週間行ったところ、2つの運動群の被験者の体重と胴囲は、対照群に比べてだいたい同じ程度に減った。しかしインターバル群の被験者のほうが、内皮機能、血圧降下、インスリン感受性、空腹時血糖値、高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール、ミトコンドリア形成(活動のための燃料を細胞が産生する能力の指標)が大きく改善した。 16週間終了時にメタボリックシンドロームの基準に該当しなくなった者は、インターバル群では46%いたが、中強度運動群では37%だった。対照群の被験者は全員が追跡時もメタボリックシンドロームの基準に合致した。 移行のしかた
著者らは、高強度インターバルトレーニングが一定した中強度運動よりも優れているのは、インターバルトレーニングのほうが高い心拍数を必要とすることに関係があるとしている。インターバル群の患者は、酸素吸収能が35%向上したが、中強度運動群の患者の酸素吸収能は16%しか向上しなかった。 Wisl遵kff博士によれば、ひとつの運動推奨で万人に合わせるのはとうてい無理だということをこの試験は示している。 「運動トレーニング/身体活動の処方は、メタボリックシンドロームの者と非活動的な者とでは違っていなければならない」とWisl遵kff博士はheartwireに語った。「現行の推奨の効果を見てください。たいして効いておらず、推奨される量の運動を人々にさせられていない。むしろ、肥満してメタボリックシンドロームになる人間の数のほうが増えていっている。」 メタボリックシンドロームの者のほとんどは過去5年から10年以上にわたって日常的な運動をしておらず、現行の運動推奨を順守すること自体が大きな壁であると、博士は考えている。 「トレーニングを1週間の大半の日に行うのは困難だと多くの人は感じており、こうした人々にとっては現行の推奨はやる気を起こさせるというより、うざったいものでしかない」とWisl遵kff博士は言う。「我々が伝えたいのは、そうした人々は今回の論文に記載されているインターバル運動の処方を週に2回で10週から14週をぜひ試してほしい、ということだ。皆、すぐに体形がしぼられ、この『医療』で観察される副作用は、今のところ、トレーニング日以外の日も身体を多く動かすようになることしかない。運動強度を運動時間数で代替することは不可能であることを、我々は明らかにした。健康を増進し、既知の心血管系リスク因子を正常化(ないし予防)するには、短めで強めのトレーニングセッションが優れた療法であると考えられる。 AHAのスポークスマンでAHAの運動ガイドラインの著者であるDr Barry Franklin(ウィリアム・ボーモント病院、ミシガン州ロイヤルオーク)がこの研究の知見に関するコメントを報道取材で述べている。Franklin博士によれば、運動の総エネルギー消費量を一定にした場合は、より激しく強い運動のほうが中強度の運動よりも心血管系に対するベネフィットが大きいことを示した研究は、今回のものが始めてではない。 「しかし、そうしたベネフィットが加わるのは、順守低下の可能性だけでなく、筋骨格系および心血管系の合併症の可能性の面で必ず不利に働く」と博士は明言する。「したがって、これまで身体を動かさなかった者が中強度の運動を心地よく感じられるならば、有害な徴候や症状なしで維持・達成できる範囲で、もっと激しい運動を目標に据えることを考えるべきである。」 CVDサブグループに一貫したインターバルトレーニングのベネフィット
Wisl遵kff博士の話によれば、博士らは心不全患者および冠動脈疾患患者を対象にして同様の運動試験を実施したことがある。どちらの場合でも、心臓、血管、筋骨格機能に対する効果としては有酸素インターバルトレーニングのほうが中強度運動よりも優れていた。 「大部分の者がいずれは心血管疾患になり最終的に心血管系の原因で死亡するメタボリックシンドロームの者を対象にした今回の試験の結果と合わせて考えると、内科医はこの有効な治療戦略をこれから真剣に取り入れる必要があると我々は確信している」とWisl遵kff博士らは記している。 博士らは「SmartEX試験」という多施設試験を今年開始して、この運動プログラムの安全性と生存率のデータを現在調べている。「2年から4年後には価値のある情報が得られるものと我々は期待している」とWisl遵kff博士は語った。
この研究は、ノルウェー心血管疾患評議会、ノルウェー研究評議会、セント・オラフ大学病院心血管・医学研究基金(トロンヘイム)、Torstein Erbo財団(トロンヘイム)、米国国立衛生研究所、米国農務省の支援を受けている。著者らの開示情報では、関連する金銭的利害関係はない。
出典 1. Tj遵knna AE, Lee SJ, Rognmo 遵K, et al. Aerobic interval training versus continuous moderate exercise as a treatment for the metabolic syndrome. A pilot study. Circulation. 2008; DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.108.772822. Available at http://circ.ahajournals.org.. |