【7月25日】
米臨床内分泌学会(AACE)が7月23日に発表した合意声明によれば、前糖尿病の管理では徹底したライフスタイル管理と、糖尿病と同じ血圧・脂質コントロール目標の設定が必要であるという。内分泌科診療について次の最終文書が発表されるのは、今年下半期の予定である。 「個人そして社会として、肥満、糖尿病、前糖尿病の異常な増加傾向に対応しなければならない」とAACE経理担当者で米代謝研究所(Metabolic Institute of America)医療部長であるYehuda Handlesman MD, FACP, FACEはニュース発表で話した。「解決策の実行に困難があることは分かっている。しかし、内分泌専門医の一団体として、私たちはできる限り地域社会と国の取り組みを支援するよう努力している」。 今回の新しいガイドラインは初の総合的前糖尿病治療レジメンで、糖尿病と代謝障害の専門家が合意した推奨事項からなる。合意声明ではライフスタイル改善についての具体的ガイドラインのほか、適切であれば薬剤による介入についても説明もある。 前糖尿病は空腹時血糖値の上昇または耐糖能障害と定義されるが、米国の前糖尿病有病率は5600万人を超える。しかし、前糖尿病と診断されていない人がまだ大勢いる。 前糖尿病は心血管疾患と2型糖尿病発症のリスクを上昇させるため、ガイドラインは2型糖尿病をいち早く認識し、より徹底的に治療することに全精力を注いでいる。 今のところ米食品医薬品局(FDA)は前糖尿病患者の糖尿病発症を予防する薬理学的治療を承認していないため、専門家団はダブルの前糖尿病治療アプローチを勧める。 第一の目標は、米国政府の糖尿病予防プログラムが設定したガイドラインに沿って2型糖尿病への進行を予防する積極的ライフスタイル管理である。 「ライフスタイルは顕性糖尿病への進行に明らかに影響を与えるが、十分とはいえない」とベイラー医科大学(テキサス州ヒューストン)内科教授、合意形成会議議長であるAlan J. Garber, MD, PhD, FACEは話した。「特にハイリスク群では薬剤が必要になるだろう」。 第二の目標は、ライフスタイル改善に抵抗性を示す前糖尿病患者の心血管合併症を薬物療法で予防することである。この場合、血糖コントロールの薬を使うだけでなく、適切であれば高血圧や高コレステロール血症の薬剤を使う。血糖値が糖尿病、高血圧あるいは脂質異常症の患者に近いハイリスクな人は、臨床医による危険因子の厳密なモニタリングを考える必要がある。 「重症度にも幅があることがデータで示されている。最も重症度の高い人は、2型糖尿病と診断された人とほぼ同じリスクがある」とAACE副会長、Scripps Whittier糖尿病研究所(カリフォルニア州ラ・ホーヤ)医療部長のDaniel Einhorn, MD, FACP, FACEは話した。「このような最もリスクの高い人は少数であるが、徹底的ライフスタイル療法が無効な場合は薬理学的治療が適切である。とにかく糖尿病のリスクがある人はみな自分の危険因子レベルに注意し、行動を起こす準備をすべきである」。 合意声明が取り上げた具体的問題とその関連コメントは次の通りである。 1. 正常な耐糖能、前糖尿病、糖尿病の範囲は? どのような基準でこれらを診断すればよいのか?
正常な血糖値は、空腹時血糖値100 mg/dL未満、糖負荷後血糖値140 mg/dL未満と定義される。糖尿病と診断される人は空腹時血糖値126 mg/dL以上、糖負荷後血糖値200 mg/dL以上とされるが、その境界範囲の定義は明確でない。なかには、中間の血糖値レベル(空腹時100潤オ125 mg/dL、2時間後140潤オ199 mg/dL)が顕性2型糖尿病、心血管疾患、微小血管合併症の前触れである人もいる。 2. 前糖尿病を放っておくと、どのような臨床的リスクがあるのか?
大規模なDECODE Studyで2時間後血糖値が95mg/dLから200 mg/dLに上昇したとき、全死因死亡率が直線的に増加した。糖尿病予防プログラムでは、糖尿病に進行した人の13%近くが糖尿病性網膜症になり、同じように耐糖能障害患者の約8%が網膜症になった。STOP NIDDM Trialでは3年間プラセボを投与した耐糖能障害患者の血圧が上昇し(>140/90 mm Hg)、心血管疾患(CVD)イベントの発現が4年間で約5%増加した。また、糖負荷後の高血糖が突然死の増加に関連することがHonolulu Heart Studyの23年間の追跡で分かっている。 3. どのような目標と治療法で前糖尿病を管理すればよいのか?
徹底的ライフスタイル管理は血糖を改善し、心血管危険因子を減らす安全で有効な方法であるため、これを選択する。血圧と脂質のコントロール目標は糖尿病の目標に合わせる。前糖尿病の人はまず体重を5%潤オ10%減らし、自己管理、現実的で段階的な目標設定、刺激の抑制、認識改善計画、社会的支援、適切な強化策などで長期的体重維持に努める。 1日30〜60分、週5日以上、適度な身体活動を定期的に行うこと。総脂質、飽和脂肪、トランス脂肪酸が少なく、十分な食物繊維を含む食事にする。血圧コントロールのためには、塩分の摂取を控え、アルコールを過剰摂取しないことが望ましい。 FDAによって承認された糖尿病予防薬はまだないので、前糖尿病の薬物療法開始を決定する際は、現在あるエビデンスとリスク・ベネフィット解析を必ず考慮に入れること。特にハイリスクな前糖尿病患者の場合、ライフスタイル対策に加えて薬理学的な血糖治療を検討してもよい。メトホルミンとアカルボースは安全な薬剤で、前糖尿病から糖尿病への進行抑制に関して強固なエビデンスがある。チアゾリジンジオン薬も前糖尿病から糖尿病への進行リスクを抑制するが、うっ血性心不全や骨折など安全性に問題がある。 前糖尿病の人と糖尿病と確定した人の脂質レベル目標は同じにする。治療目標として低比重リポ蛋白コレステロール100 mg/dL、高比重リポ蛋白コレステロールを除くコレステロール130 mg/dL、アポリポ蛋白B 90 mg/dLを達成するにはスタチンが望ましい。フィブラート、胆汁酸吸着剤、エゼチミブなどによる補助療法が有効な患者もいる。ナイアシンは脂質プロファイルを改善するが、血糖に副作用を及ぼす可能性がある。 前糖尿病患者の目標血圧は、糖尿病患者の推奨血圧(<130/80 mm Hg)と同じとする。アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン受容体遮断薬は第一選択薬とし、カルシウム拮抗薬は第二選択薬とする。血糖に有害な作用があるため、可能であればチアジド薬やβ遮断薬などは避ける。 アスピリンは、消化管や頭蓋内などで出血を起こすリスクが高くないすべての前糖尿病患者に推奨される。 4. 前糖尿病とその治療法はどのようにモニターしたらよいか?
前糖尿病患者の場合、年1回の耐糖能検査、年2回の微量アルブミン尿、空腹時血漿血糖、ヘモグロビンA1C、脂質値の検査を受けるべきである。最もリスクが高い患者(耐糖能障害、空腹時血糖値異常、メタボリックシンドロームのうち2つ以上に該当する患者)はより慎重にモニターする。
5. 前糖尿病治療の費用効率はどうか?
糖尿病の予防に費用がかかっても、糖尿病、糖尿病合併症、入院の患者年数が短くなることで費用が削減され、結果的には収支が合う。
6. 前糖尿病の診断と管理を明確にするため、どのような研究をすればよいか?
著者らは、将来的に前糖尿病の研究を進めていくことが必要である、と述べている。
Amylin Pharmaceuticals、Daiichi Sankyo、GlaxoSmithKline、LifeScan、Merck & Co、Novo Nordisk、Roche Laboratories各社がこの合意声明を支援した。
AACE Consensus Statement of the AACE Task Force on Pre-diabetes. Released July 23, 2008. |