2008/8/22 医療政策フォーラム21:医療版「事故調査委」−−厚労省の見解 再発防止が最大の目的 毎日jpより転載
医療政策フォーラム21:医療版「事故調査委」−−厚労省の見解 再発防止が最大の目的
2008年8月8日 毎日新聞
厚生労働省は、医療死亡事故の原因を究明する第三者機関として、10年度の設置を目指す「医療安全調査委員会(仮称)」の第3次試案と、試案から法制定が必要な部分を抽出した「医療安全調査委員会設置法案大綱案」を相次いで公表した。調査委は、国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会の医療版。従来は刑事・民事裁判に委ねられていた医療過誤による死亡事故などの解明に、医療関係者や法律家らがあたることで再発防止を目指す制度だ。ただ、医療界には調査結果が刑事手続きに用いられることなどへの反発もある。厚労省医政局の佐原康之・医療安全推進室室長に、これまでの経緯や現状、課題を聞いた。

佐原康之・医療安全推進室室長
◇事故前提のシステム設計
Q:そもそも、医療安全調査委員会を設置するということになったのは、どういう経緯からですか。
A:長い経緯があります。医療事故や医療安全ということについて、1990年代まで社会的にはあまり問題にされていませんでした。医療事故がなかったわけではないと思うのですが、医療機関から公表されることは少なく、また、患者側からの声も上がりにくい状況でした。しかし、1999年に横浜市立大学附属病院での患者取り違え事故や都立広尾病院での死亡事故を契機に社会的な関心が高まり、次第に医療事故の実態が明らかになってきました。一方同時期に米国で、「人は誰でも間違える」と題する報告書が出て、医療事故はどこでも起き得るのだから、それを前提に医療システムを設計していく必要がある、との提言がなされました。
日本の医療法は1948年に制定されましたが、医療事故があることを前提に作られていませんでした。したがって、事故発生時の対応、例えば、何を事故と定義するのか、患者遺族への説明はどうするのか、事故をどこに届け出て、どのような調査を行うのか、その調査結果の取扱いはどうするのか、といった点できちんとした制度ができていません。事故があることが誰の目にも明らかな、例えば航空機事故の場合には、事故を起こした航空会社が国土交通省に報告し、航空・鉄道事故調査委員会が事故原因を調査する、という仕組みがありますが、これとは対照的です。
医療事故の原因究明・再発防止を図る仕組みが必要ですが、医療事故についてはこれを専門的に行う機関がありません。結果として、捜査機関が犯罪捜査の観点から医療事故を扱う、あるいは民事裁判で真相を明らかにする、という流れになっていますが、これは、医療従事者にとっても患者・遺族にとっても満足できる仕組みではありません。
医療行為は常に事故のリスクを伴うものです。医療者に過誤がある場合もありますが、不可避の合併症もあります。そのような医療事故の原因究明を、捜査機関が犯罪捜査の観点から行うことに、医療界には強い抵抗感があります。また、患者遺族には、自分の肉親はなぜ死んだのか原因を究明してほしい、また、自分の肉親の死を無駄にせず二度と同じような事故が起きないよう再発防止に役立ててほしい、との願いがあります。しかし、刑事手続や民事手続は原因究明や再発防止を目的としたものではなく、このような願いは十分にかなえられません。
医療事故の原因究明・再発防止を担う中立的第三者機関の創設については、2001年の日本外科学会声明を皮切りに、2004年の日本医学会加盟の19学会の共同声明、2005年の日本学術会議の報告など、様々な提言がなされてきました。2005年からは「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」が開始され、医療事故発生時の診療内容を、第三者の医師等が医療機関からも遺族からも中立的な立場で評価するという事業も行われています。そんな中、2006年2月に、産科医が医師法21条違反と業務上過失致死容疑で逮捕されるという事件があり、警察に医療事故を届け出るのではなく、医療の専門家を中心とした中立的第三者機関に届出し、この第三者機関が専門的な観点からしっかりと原因究明を行うという仕組みが必要であるとの声が大きくなりました。2006年6月には国会の衆参厚生労働委員会での決議もなされました。厚労省では、2007年の3月に第三者機関の創設に関する第1次試案を公表し、併せて同年4月から有識者による検討会を設置し、様々な議論をしていただきましたが、これらの議論を踏まえて同年10月に第2次試案、そして第2次試案に対して寄せられたご意見を踏まえて2008年4月に第3次試案を発表したところです。
Q:第1〜3次試案を経て、医療安全調査委員会設置法案大綱案が6月にできたという流れですが、1次試案から3次に至るまで、変わったポイントはどこで、それはなぜ変わったのですか。
A:1次試案は、今後検討していく際に問題となる論点を広範に示すとともに、論点ごとに検討の方向性についての選択肢を記載しました。2次試案は、選択肢を提示するのではなく、制度案の骨格を示しました。3次試案では、2次試案では十分に書き込めておらず記載を明確にすべきである、とのご指摘がパブリックコメント等で多かった論点、例えば、医師法第21条の改正の有無や届け出るべき事故の範囲、医療安全調査委員会が調査を終了した後の民事手続や行政処分、刑事手続との関係等について、記載を充実しました。
Q:大綱案が6月に公表されていますが、これはどういうものですか。
A:3次試案で提案した内容を実現するためには、法律改正が必要です。ただし、3次試案に記載されていることが、すべて法律事項というわけではありません。法律の下の政省令や医療安全調査委員会が定める実施要領、あるいは予算措置で対応可能なものなど、さまざまあります。大綱案は、3次試案のうち、法律で対応すべき事項を抽出して、法律案の条文の形で表現したものです。したがって、3次試案に記載されているが、大綱案には記載されていない内容もあります。両者をセットでご覧いただきたいと思います。
◇メンバーに法律関係者も
Q:調査委員会のメンバーは、どういう方で構成されるのでしょうか。そして、それはどういうことを想定しているのでしょうか。
A:医療の専門家を中心に、法律関係者やその他の有識者で構成してはどうか、と提案しています。
医療の専門家については、病理医等の解剖担当医、臨床医や看護師等が想定されます。これら医療の専門家が議論の中核を担うと思います。現在モデル事業では、全国8地域で約2500名の協力医リストがあり、医療事故の内容によって、例えば産科の事故なら産科医を中心に、心臓外科の事故なら心臓外科医を中心に集まっていただき、ディスカッションしています。
Q:調査委メンバーの「法曹界」や「医療を受ける立場を代表する者」とはどういう方をイメージしているのでしょうか。
A:「法曹界」としては、弁護士が中心になると思いますが、法学部の教官なども想定されます。また、医療を受ける立場を代表する者とは、広く医療のユーザーサイドの方が入ると考えていただければ良いと思います。調査委員会のメンバーは、医療者だけとすべきとのご意見もあります。ただ、委員会での審議は、その性格上非公開で行われることになりますので、委員会の透明性や中立性を確保し、社会の信頼を得ていくためには、医療者以外のメンバーが加わることが必要と考えられます。
また、委員会は、医療という国民誰にとっても身近な事象を扱うため、その報告書は専門用語がちりばめられ、医療者しか理解できないというものでは、社会に受け入れられません。医療者以外でも理解できる内容にしていく必要があります。それともう一つ、モデル事業での審議を傍聴していて感じることですが、委員である医師等は本当に真剣に議論をしています。ただ、非公開なためにそれが十分に外に伝わりません。医療には一定の限界があり、不確実な点がたくさんある、避けられない事故もあるのだと言うことを、医療者以外の人たちにも理解していただく必要があります。医療者だけで議論をしていては、いつまでたっても、医療者以外の方々の理解が得られません。医療についてのサポーターを増やす、といったくらいの視点が必要なのではないでしょうか。
Q:調査報告書が「問題あり」とし、警察へ通知するとしている事案に「重大な過失」というものがありますが、「重大な過失」とは何を指しているのでしょうか。
A:第3次試案では、医療事故の届出先を警察ではなく医療安全調査委員会に一本化することを提案しています。これは医療事故の調査を刑事捜査という観点からではなく、医療安全という観点からまず実施すべきとの考えに基づきます。 医療の専門家を中心とした医療安全調査委員会が医療事故の調査を行い、「重大な過失」を認めた場合等、悪質な事例に限定して、警察に通知する、そして刑事手続については委員会からの通知の有無を踏まえて対応する、ということを第三次試案では提案しました。そこで、「重大な過失」とは何か、ということが問題になります。
まず申し上げたいことは、死亡という結果の重大性に着目したものではない、ということです。死亡事故だからすなわち重大な過失である、という訳ではありません。また、法的な責任があるかの評価を加えるものではなく、あくまで委員会による医学的判断を医療者が中心となって行っていただくことになります。大綱案では、「重大な過失」という表現ではなく「標準的な医療から著しく逸脱した医療に起因する死亡」は通知すると記載されました。
Q:では、「標準的な医療」とは何ですか。それを明確にする必要がありませんか。
A:極めて難しい課題と思います。例えば、心疾患の患者さんを脳外科医が緊急に診察しなければならない状況もあるでしょう。このような場合に、循環器医にとっての標準的な医療を脳外科医に当てはめるのは適当ではありません。都会の大病院なら当たり前にできても、僻地の診療所では十分対応できないこともあります。ある手術を行う場合でも、患者さんの年齢や基礎疾患の有無、病状の進行度合い等によって、行うべき標準的医療というのは変わってきます。したがって、標準的な医療とは、全国一律に決まるものではなく、様々な要素を考慮して個別具体的に専門家が判断すべきものでしょう。道路交通法のように「時速60キロ以上は違反」と、医療について単純にルール化できるものではありません。大まかな基準は必要かもしれませんが、役所があるべき医療について詳細な基準を決めていくよりも、医療の専門家を中心とした委員会が個別に判断すべきものではないでしょうか。判断する責任を医療界自ら引き受けていただきたいと思います。
◇十分な議論が必要
Q:設置法案と医師法21条の関係は、設置法が成立すればどうなるのでしょうか。
A:医師法21条では、医師は死体を検案して異状を認めた場合には、所轄警察署に届け出なければならないとされています。しかし、先ほど申し上げたように、医療事故の調査は、刑事捜査という観点からではなく、医療安全という観点からまず実施すべきですので、警察に届け出るという仕組みは改めたいと考えています。第3次試案、大綱案においては、医療死亡事故が発生した場合には、医師法21条に基づく警察への届出ではなく、医療安全調査委員会へ届け出るという仕組みを創設するとともに、医師法21条を改正し、医療事故の届出をすれば、警察への届出は不要とすることを提案しています。
Q:設置法案には、賛否両論あるようです。それぞれどういう立場の方がどういうご意見で、どういう議論が争点になっているのでしょうか。また、民主党も法を準備しているようですが、政府案と最も違う点はどこなのでしょうか。
A:そうですね。まだいろいろなご意見・ご指摘があります。第3次試案へのパブリックコメントを見ますと、日本医師会や日本医学会また主な病院団体等からは、色々注文はあるが概ね賛成とのご意見をいただいています。ただ、一部の地域医師会や学会、病院団体からは反対のご意見も寄せられています。個人の医師からの反対意見もあり、医療界の中では、まだ完全な合意形成ができていないように思います。一方、患者サイドからは、第3次試案は第2次試案に比較して医療者に配慮しすぎているが、新しい仕組みに一歩踏み出すことが重要なので賛成するといったご意見が多いです。
民主党案は、文章に書かれている以上に行間の部分の解釈が難しく、何ともコメントしがたいです。
Q:設置法案成立の見通しはいかがですか。
A:現状を一刻も早く改めるべきで、そのために法案を国会に提出し次は国会で議論をすべきというご意見がある一方で、まだまだ課題が多く慎重に議論すべきとのご意見もあります。厚労省では先の通常国会に法案提出すべく準備をしていました。ただ、本件のような医療界全体が運営していく仕組みは、医療界の中に異論が残る状況で進めるべきものでもなく、多数決で決めるようなものでもありませんので、通常国会への法案提出を見送りました。議論の場が秋の臨時国会になるかどうかはわかりませんが、いずれにしても十分な議論が必要と思います。


ドクター ご紹介 - http://kanja.ds-pharma.jp/health/yotsu/doctor/078/index.htmlから転載







腰痛の発生頻度や原因について教えてください。
上半身の重さは体重の約70%といわれています。その重さを支えているのが腰椎です。腰椎には椎体という骨の部分と椎間板という骨と骨の間に入っている部分があります。椎体は機械的な負荷により変形が進行し、また骨粗鬆症の進行とともに脆くなっていきます。椎間板も年齢とともに変性していきます。驚くことにこの変性は10歳の子供たちのすでに9%に起こっていると報告されています。治療を要する腰痛の発生頻度の調査では20歳代以上の年齢層ではほぼ同じくらい(40〜65%)で発生していることが報告されています。このような背景から近年、腰痛はもっとも有訴率が高い疾患になっています。大半の腰痛は数日間で治りますが、臀部痛や下肢痛を伴う腰痛は専門的な治療が必要になる場合も多いので注意しましょう。





