【3月9日】2報の試験で、難治性群発頭痛患者の治療選択肢としての後頭神経刺激の使用が裏付けられている。 第1の研究では、英国立神経・神経外科病院神経学研究所(ロンドン)とカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者らが、中央値で20カ月の治療を受けた患者8例に関する長期経過観察結果を報告している。「後頭神経刺激は安全かつ有効な群発頭痛の治療選択肢となると思われ、原発性頭痛症候群における神経刺激療法の新しい時代が始まるかもしれない」とPeter J. Goadsby, MDを上級著者とする研究者らは結論する。 第2の論文では、ベルギーの研究者らが患者8例を対象としたプロスペクティブ(前向き)パイロット試験の結果を報告している。「後頭神経刺激は薬剤抵抗性の慢性群発頭痛の効率的な治療法であり、深部視床下部刺激よりも安全であるかもしれない」とリエージュ大学(ベルギー)のJean Schoenen MDを上級著者とする研究者らは結論している。 これらの試験は『Lancet』および『Lancet Neurology』オンライン版に3月8日付けで掲載された。 同じく3月8日付けの『Lancet』オンライン版に掲載されたこの論文に付随する解説で、INM Neuromed頭痛クリニック(イタリア、Pozzilli)のAnna Ambrosini, MD, PhDは、これらの試験で認められた後頭神経刺激の臨床効果は、視床下部深部脳刺激で認められる臨床効果よりも「若干弱く、発現が緩徐」なようであると指摘している。しかし、有害事象および安全性プロフィールは視床下部深部脳刺激療法よりも優れていると思われる。 「薬剤抵抗性の慢性群発頭痛における後頭神経刺激の臨床的有用性を確立するには、より多くの患者を対象とした試験を行う必要がある」とAmbrosini博士は結論している。「しかし、この2つの最近の試験から強力に示唆されるように、視床下部深部脳刺激を検討する前に薬剤抵抗性の慢性群発頭痛患者を対象とした後頭神経刺激の試験を提案することは妥当であると思われる」。 最も痛みが強い頭痛障害 群発頭痛は一般に最も痛みが強いタイプの原発性頭痛の一種であると認識されていると両研究グループはともに指摘している。慢性群発頭痛患者は「長年にわたり日常的な予防的薬物療法を必要とする、良くなることのない病気を抱えている」とGoadsby博士らは記述している。「薬剤抵抗性である場合、慢性群発頭痛はこれまで頭蓋内への侵襲的処置と神経切除でしか治療できなかった」。 視床下部後部の深部脳刺激を用いたこれらの頭痛の治療は効果的であったが、わずかながら致死的な脳出血の危険性を伴うと著者らは指摘している。難治性頭痛に対する後頭神経の末梢性刺激は、片頭痛、後頭神経痛等の他の適応症で用いられていると著者らは指摘する。 「多量の後頭神経注射に関するわれわれの経験、後頭神経刺激の効果に関する神経画像検査、深部脳刺激の合併症発現率と死亡率についての懸念に基づいて、われわれは難治性の慢性群発頭痛患者への後頭神経刺激インプラント植込みを始めた」とGoadsby博士らは記述している。 この論文でGoadsby博士らは、後頭下部に電極を植え込んだ患者8例における中央値で20カ月(範囲6-27カ月)の経過観察結果を報告している。1例目の患者を除く全例に両側性刺激が行われた。1例目の患者は当初、片側性刺激が行われ、後に両側性刺激が行われた。 頭痛発作の改善は、2例では著明改善(ぞれぞれ90%および95%の減少)、3例では中等度改善(40%、60%、20-80%)、1例では軽度改善(25%)と報告された。これらの6例はこの治療法が他の治療法よりも好ましいとした。残る2例は刺激時の頭痛の頻度について変化なしと評価した。このうち1例はこの治療法が他の治療法よりも好ましいとしたが、もう1例は他の治療法よりも好ましいとしなかった。 頭痛発作の重症度と頻度の両方の改善が認められたが、これらの改善は数週間または数カ月の間に発現した。しかし、例えば、電池消耗等でインプラントが故障すると、数日間で頭痛発作が再発したと著者らは注記した。有害事象にはリードの変位(1例)、交換を必要とする電池の消耗があった。 「疼痛が主として三叉神経の眼分枝で感じられる症候群は、関連する皮節の刺激によって改善できるという事実から、この治療法の基本原理は脳機能の変化の1つであることが示唆され、一方、治療効果発現までの時間は脳可塑性が意味するものの特徴をすべて備えている」と著者らは結論している。「この結果は患者に希望を与えるものであり、今回の症例や、さらなる症例の慎重な経過観察によって、原発性頭痛症候群の生物学を理解する十分な機会が得られる」。 長期間の刺激による変化 『Lancet Neurology』オンライン版に掲載された別の報告で、Schoenen博士らは薬剤抵抗性の慢性群発頭痛患者8例を対象としたこの治療法に関するパイロット試験の結果を示している。 患者には、頭痛が起こる側に後頭下神経刺激装置を植込んだ後、連続刺激の前後に日記に頭痛発作の頻度、強度、対症療法の詳細を記録するよう求めた。 1例では散発的な自律神経系の発作が持続したものの、2例ではそれぞれ16カ月および22カ月の経過観察後に頭痛が消失したとSchoenen博士らは報告している。別の3例では発作頻度が約90%減少した。 さらに別の2例では約40%の改善が認められ、このうち1例ではインプラントの植込み期間が3カ月間のみであった。残る1例は治療が無効であったため、4カ月後に刺激装置がシャットオフされた。この患者は刺激による麻痺が耐え難いとしたとSchoenen博士らは注記している。 平均経過観察期間は15カ月間(範囲3-22カ月間)であった。発作の強度は頻度よりも早く低下する傾向が認められ、残る発作は平均で50%改善した。1例を除く全例で予防薬の用量を大幅に減量することができた。 改善が認められたすべての患者では、刺激装置の電源切断または電池消耗による刺激の中断後、数日以内に再発および発作頻度の増加が起こった。 頭部および頭部外の痛覚情報処理の何らかの変化を評価するため、著者らは電気および圧刺激痛覚閾値ならびに侵害受容瞬目反射を測定した。後頭神経刺激によって痛覚閾値が有意に変化することはなかったが、侵害受容瞬目反射の振幅は刺激時間が長くなるにつれて増大したと著者らは注記している。 重篤な有害事象は認められず 「植込みから臨床的に有意な改善までに2カ月以上かかることから、この処置は上部脳幹または間脳中心レベルでの緩徐な神経調節プロセスを介して作用することが示唆される」とSchoenen博士らは結論している。 Goadsby博士らの試験は、すべての段階で外部資金の提供を一切受けていないと著者らは注記している。著者全員が頭痛の神経刺激療法に関する他の無関係の試験のため、Medtronic社およびAdvanced Bionics社からの金銭的支援を受けている。両社とも本試験には一切関与していない。 |